(この質問については9月15日大分合同新聞朝刊に記事が掲載されました。)
近年、凶悪な犯罪があとを絶たないという大変深刻な事態が続く中、その被害者に対する支援は長い間立ち遅れていました。
特に二次被害が被害者やその家族を苦しめています。犯罪被害者やその家族にとっては、犯罪そのものに対するショックや悲しみが当然ありますが、二次被害については余り知られていません。
二次被害にもいろいろなケースがあります。例を挙げると下記のとおりです。
(1) 犯罪被害に遭った人や家族の皆さんが心身の不調を訴えたり、周囲からの興味本位の質問や心ない対応で傷つく。
(2) 仕事ができずに収入が途絶えたり、医療費で多額の出費を抱える。
(3) 自宅が事件現場になった場合、急な転居を余儀なくされる。
(4) 被害者が死亡した場合、傷ついた家族が死亡届を出すなど役所に提出する各種の手続きについての精神的な負担が大きい。
(5) 捜査の過程で何度も同じことを証言するうち、事件の記憶が五感を通して残る。
(6) マスコミ報道においては、遺族が見たこともない被害者の写真を勝手に報道に使うなど、犯罪被害者とその家族をさらし者にするかのように感じさせるケースもある。
これまでの被害者支援の動きは、平成16年12月に犯罪被害者等基本法が成立し、これに基づき犯罪被害者支援のための施策がスタートし、平成17年には犯罪被害者等の権利権益の保護が図られる社会を実現するための施策が具体的にまとめられました。
このような中、大分県でも犯罪被害者がいつでもどこでも必要な支援を受けることができ、誰もが安心して暮らすことのできる社会の実現を目指して、今年4月に大分県犯罪被害者等支援推進指針が策定されました。
犯罪被害者等基本法は、被害者が個々に応じた支援を途切れなく受けられると明記しており、支援策を講じるのは国や地方公共団体の責務とされています。しかし、平成28年4月までに条例を制定したのは27府県にとどまり、市区町村だと約2割です。県内市町村でもこれまで責務という意識が薄く、県も制定していないことなどを理由として進んでいない状況です。
(質問)県内各市町村における条例制定の機運を醸成する意味でも、県が積極的に取り組み、できる限り早期に犯罪被害者等の支援のための条例を制定すべきだ。県の考えは?
(生活環境部長)
犯罪被害者等の支援に際しては、その方々の気持ちに寄り添い、必要とする支援に適切につなぐことが大切であると考える。条例制定についてはこれから議論していくが、まずは指針の施策にしっかり取り組み、被害者等を支えていきたいと考えている。
(まとめ)
*被害者支援は誰のための施策かというと、すでに被害者となった皆さんに対する支援ばかりでなく、これから被害者になるかもしれないすべての皆さんのための施策です。
*たとえば、高齢者の皆さんや障がい者の皆さんに対する支援などと同じように、社会そのもののためにやっておかなければならないテーマであり、当然あるべきセーフティネットです。
*そして、被害者に近い自治体である市町村こそが、真に被害者に寄り添える支援を行うのに適した自治体です。その市町村に条例制定をうながす大きな役割を担うのが県なのです。
*また、県民の犯罪被害者とその家族への理解が深まることにより、犯罪が減少することにもつながるのではないでしょうか。犯罪が減少すれば大分県の目指す「安心」「活力」「発展」のうちの「安心」がより強固なものとなります。
*大分県の指針の策定は大きな一歩ですが、今後、大分県に犯罪被害者やその家族等を支援するためのすばらしい条例が制定されることを強く要望しました。