「ふるさとに人口と活力を取り戻す」には・・・

 大分県市議会議長会主催の研修会が大分市のレンブラントホテルで開催され、内閣官房参与で京都大学教授の藤井聡先生の講演「ふるさとに人口と活力を取り戻す」を拝聴しました。

 藤井教授の説は単純明快で、「ふるさとに人口と活力を取り戻す」には、「公共投資の偏在が導いたいびつな国土」を是正するために、地方の新幹線や高速道路の計画的整備を行うしかないということです。

 明治9年(1876年)の人口ベスト15の大都市と現代の大都市を比べると、「新幹線が整備された都市は大きく発展し、新幹線の整備されなかった都市は衰退した(北海道の州都である札幌は例外)」ことがわかります。(図1と図2)
図1
261027明治大都市

図2
261027新幹線

そして、本来計画されながら進捗が大きく遅れている新幹線網が計画通り進めば「人口20万人以上で新幹線なしの地方都市」が解消されます。(図3)ちなみにドイツやフランスでは「人口20万人以上で新幹線なしの地方都市」は合わせて2カ所しかありません。
図3
261027新幹線計画

 また、高速道路網も欧米に比べるとネットワーク化が全く遅れていますが、「高速道路がつくられたところは商業が活性化している」(図4)ということなので高速道路も計画通り作らないと地域間格差がますます広がります。日田市には高速道路がとおっていますがネットワーク化ができていません。

図4
261027高速道路

 まとめると以下のようになります。
(1) 新幹線がなければ人口減に拍車がかかり、都市の衰微は決定的になる。
(2) 高速道路がなければ、工業成長率は半分に、商業成長率は十分の一になる。
(3) 道路が無いところからあるところへ人口や経済が「移転」していくため、「道路整備の偏在は整備のない地方に経済被害を与えている。
(4) 「ふるさとに人口と活力を取り戻す」ためには地方の新幹線や高速道路の計画的整備が不可欠である。

 ちなみに日本が「財政再建」「規制緩和」へ舵を切った平成8年以降の公共事業関連費は先進各国に比べて大きく立ち遅れています。(図5)
図5
261027公共事業減少

 今後は予算的裏付けのある国土計画・インフラ整備計画を立案し、それを推進する「国土強靭化基本計画」を推し進めて行かなければなりません。

 税収を増やすためには消費税の増税を延期して、「財政出動」と「減税」を行うことが効果的であり、また、財政赤字については日本銀行が国債を買い取ることで対応できるとのことです。

 不況になると地方でのビジネスが難しくなり、都市への集中が進みます。とかくメディアは公共事業を目の敵にする傾向がありますが、公共投資でデフレを脱却して一極集中を解消することこそ「ふるさとに人口と活力を取り戻す」ことにつながります。

 一極集中の代名詞である東京は、地方から若者を吸い上げるばかりで合計特殊出生率が最も低い地域であり、日本の人口減少の元凶を作りだしている都市と言えます。そのような一極集中を食い止めて、「公共投資でふるさとに人口と活力を取り戻す」ことこそ今後の日本の発展につながると思いました。